『デート~恋とはどんなものかしら~』1話 船内での会話の文字起こし

あまりにも暇なので、ドラマを見ていてしびれた会話を書き起こしておきます。

 

『デート~恋とはどんなものかしら~』の1話、船内での会話です。

 

登場人物は下記の通り。 

谷口巧…文学・芸術・音楽・娯楽を愛する生活力ゼロの「恋愛不適合男」

藪下依子…超理系で超合理主義者、そしてまったく融通が利かない「恋愛不適合女」

鷲尾豊…曲がったことが嫌いな今どき珍しい完全無欠の好青年

 

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谷口「僕は生まれてこの方35年、女性と付き合ったことなんかありません」

船長「一度もないの?」

谷口「ないよ!悪いか!」

船長「いや…」

鷲尾「見え透いた嘘を…」

谷口「嘘じゃない!」

藪下「ではやはり異常性癖…」

谷口「違います!もう、この際だから、ぜ、全部正直に言いますね。

   僕は小説や映画やマンガやアニメの世界が好きで、

   現実の女性にあまり興味が無いんです。人と接するのも苦手なんです」

鷲尾「じゃあなんでデートなんか」

谷口「友人に…女性と付き合えば人生が変わるって言われて、半ば強引に…。

   でもやっぱりダメでした。もうデートが苦痛で苦痛で仕方がない!

   藪下さん…僕は確かにあなたのことをイタい女だって言いました。

   そのことは謝ります。すいませんでした。

   この通り、本当にイタいのは僕なんです。僕がイタい男なんです。

   僕なんかに付きあわせちゃってすいませんでした」

鷲尾「まあ、事情は分かったけど、結局好きでもないのに好きなフリしてたんだ。

   根本的に間違ってるよ。好きだから付き合う、好きだからデートをする。

   そうでなければ、相手に失礼だろ」

谷口(うなずく)

 

船長「まあ、色々あるでしょうがこれもいい経験になるでしょう。

   では本日はご乗船、誠にありがとうございました。お気をつけて」

鷲尾「行きましょう」(藪下の手を引っ張る)

藪下「谷口さん、謝る必要はありません。私も同じだからです」

船長「そろそろ時間がね…」

藪下「私もあなたのことを好きではないのです。いえ、最初は好きだ、と思いました。

   数ある男性の資料の中から谷口さんの資料を見たとき、

   なぜだか胸がときめいたんです。

   ああ、一目惚れとはこういうものかと思いました。

   ですが、こうしてお会いしてみると全くときめかない。

   はっきり分かりました。私、あなたのデータにときめいていたんだと」

谷口「データ?」

藪下(谷口のプロフィール資料を取り出す)

  「ほら、1979年7月23日生まれ、181cm67kg…好きな数字ばっかり」

谷口「す、数字?」

藪下「全部素数なんです。こんなに素数が並ぶなんて奇跡ですよ。

   宇宙の真理が潜んでいるようでワクワクします!…いつもこうなんです。

   生身の人間には興味が持てないんです。私もイタい女なんです。

   楽しいフリをしてはしゃいでいましたが、やはりダメでした。

   デートなんて何が楽しいのかさっぱりわからない」

谷口「本当ですよね…俺にはよくこんなこと、普通にやれてると思いますよ」

谷口&藪下(微笑む)

 

船長「はい、ご乗船ありがとうございました。もう次の出港の準備を…」

鷲尾「依子さん、大丈夫ですよ。

   依子さんはいずれ素敵な男性に出会って恋をする時が来ます」

藪下「そうかしら。恋をしたいなんて全然思わない」

谷口「僕もそうだな」

鷲尾「恋愛をするのは大事なことで、人間的にも成長できるし」

藪下「しないと凶悪犯罪に走る…」

鷲尾「へ?」

藪下「社会学者が言っていました」

谷口「ハッ!いい加減なことを言うやつがいるもんだ。

   そんなのは全くの嘘です。何の関係もありません」

藪下「そうですよね」

谷口「そうですよ。恋愛なんかしたって何の成長もしませんよ。

   むしろそんなのにうつつを抜かしている連中ほど

   精神的次元が低いと僕は思いますね」

藪下「同感です。やれ合コンでどうした元カレがどうしたとか

   他に語り合うことがないのかと思います」

谷口「クソのような連中だな」

藪下「人生には、もっと大事なことがたくさんあります」

谷口「その通りです。教養のないバカ女なんかと付き合う暇があったら

   本の一冊でも読んでる方が遥かに有意義だ」

藪下「幼稚なバカ男と付き合う時間なんて貴重な人生の浪費でしかない。

   もっと価値の高いことに使うべきだわ」

鷲尾「待った!価値が高いとか低いとかないとかじゃなくて、

   恋をするのは素晴らしいことで…」

谷口「出た出た出た!」

鷲尾「何だよ」

谷口「レベルの低いテレビドラマやガキ相手の映画ばかり見て育ったんだろ。

   現代の幼稚な文化に毒されるとこういうのが出来上がるという典型例だ」

鷲尾「何だよその言い方は」

谷口「藪下さん、本当にイタいのは僕らじゃない。彼のような人種ですよ」

鷲尾「僕が間違ったことを言ってるか!」

谷口「恋愛なんてものはな、性欲を美化したものに過ぎないと芥川龍之介

   言ってるよ!」

鷲尾「恋愛をしなければ結婚だって出来ないだろ!」

谷口「本来恋愛と結婚は別物だ。昔は家と家が勝手に決めるのが普通だった。

   結婚式当日で初めて顔を見たなんてケースも珍しくなかった」

鷲尾「そんなのは不幸な時代の話だろ。相手を自分で選べないなんておかしい!」

藪下「そうかしら。その頃は今より遥かに離婚率が低かったはずよ」

鷲尾「そ、それは色んな要因が…」

藪下「恋愛結婚が増えるに従い未婚率と離婚率が増え、出生率が低下している。

   この現実をどう説明するんですか?」

鷲尾「そ、それは、だから…」

船長「すいませんがもう次の出港…」

谷口「船長、あなた結婚は?」

船長「うちは大恋愛の末に結ばれたよ」

鷲尾「素晴らしい」

船長「2年前に離婚した…クソ!」

谷口「フランスの哲学者モンテーニュはこう言っている。

   "美貌や愛欲によって結ばれた結婚ほど失敗する。

    沸き立つような歓喜は何の役にも立たない"」

藪下「共感します。私、かねがね結婚とは、

   お互いが有益な共同生活を送るための契約に過ぎないのではないか、

   と考えていました」

谷口「真理ですね。

   フランスの哲学者サルトルボーヴォワールが提唱したのもまさにそれです」

藪下「私、間違ってませんよね」

谷口「間違ってない。恋愛なんてクソの役にも立たない。結婚は契約です」

藪下「契約、という明確なルールを遂行することは

   誰よりも得意だという自負があります」

谷口「素晴らしい!むしろくだらない恋愛感情に左右されない

   あなたや僕は本来最も結婚に向いていると言えますね」

鷲尾「何?ちょっと待った。冷静になりましょう依子さん。

   お互いに好きじゃないんですよね」

藪下「好きじゃないわ」

谷口「僕も好きじゃない」

鷲尾「ですよね」

藪下「身長や体重は変動するから必ず素数になるとは限らない。

   そう考えると何一つ魅力の無い人物にしか見えない」

谷口「僕の理想のタイプはヘップバーンと原節子峰不二子メーテルを足して

   4で割った女性なんだけどどこにもかすってない」

藪下「明らかに好きじゃない」

谷口「好きじゃないね」

鷲尾「ですよね」

藪下「でも結婚なら出来そう」

谷口「出来るね」

鷲尾「出来るわけないだろ!愛情がなきゃ」

藪下「愛情、などという数値化出来ない不確定要素を基盤に人生を設計するなんて

   非合理的よ。その点、私と谷口さんなら感情を排除して割り切った関係を

   結ぶことが出来る」

谷口「ベストマッチかもしれませんね」

鷲尾「いやいやいやおかしいだろ」

谷口「試しに結んでみます?契約」

藪下「やぶさかではありません」

鷲尾「待った待った待った!冗談ですよね」

藪下「問題は、双方が納得出来る契約内容を作成できるかということです」

谷口「何とかなるんじゃないですかね」

藪下「何事も努力ですからね」

谷口「ええ」

鷲尾「マジで結婚するの…」

藪下「では、今後は結婚に向けての協議を積み重ねる、ということで」

谷口「その方向性で進めましょう」

鷲尾「絶対におかしいって!お互いに好きじゃないんですよね」

谷口「鬱陶しいやつだな!」

藪下「好きかどうかは関係ないと言っているでしょう」

鷲尾(船長に向かって)「おかしいですよね?」

船長「お前ら早く帰れよ!頼むから!!」

 

 

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この後、ここで掲げた恋愛に対する2人のロジックが、

デートを重ねることによって反駁されていくのです。

 

以上です。