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いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう 第8話 福引の話からの文字起こし

音「曽田さんって、雪が谷大塚の駅の方行きます?」

練「たまに」

音「こないだ福引やったんですけど」

練「商店街の?」

音「一等当たったんですよ」

練「すごい。え、何が当たったんですか?」

音「なんか、テレビのゲームです。…テレビ持ってないし、二等に替えてもらおうとしたんです」

練「二等は?」

音「テレビ台だったんですよ。入らないし、三等に替えてもらったんです。あれ(物干し)」

練「おお、いいですね」

音「それをね、職場の人に言ったら、なんでテレビゲームもらって売らなかったのって」

練「おお、そうか」

音「売れば何万円にもなるのにって」

練「でも、この物干し良いですよ」

音「そうですか?」

練「うん、いいです」

音「良かった。私が間違ってるのかなって思ってたから。こんなふうに思うの私だけかなって。同じふうに思う人いて、うれしいです」

練「杉原さんは、間違ってないですよ」

音「そうかな?」

練「自分の思った通りで良いと思います」

音「でも私たぶん、多数決があったら毎回ダメな方です」

練「ダメな方はダメな方で、そこで一緒にいればいいじゃないですか」

音「そこでも多数決があったら、一緒にいる人だんだん減っていきますよ」

練「俺は最後までそこにいますよ。多数決が何回あっても、俺は杉原さんのところにいます」

音「へえ」

練「そこにいます」

音「へえ」

練「最近ずっと」

音「?」

練「ずっと杉原さんのことを考えていました。何をしてても、ずっと杉原さんのこと考えてました」

音「引越し屋さん、あんな、6歳の時な、お母さん死んで、火葬場に行ってん。火の中に棺が入って、係の人に『二時間少々待っててください』って言われて。他の人らは待合室行って、私は駐車場行って、一人でな、地面に絵描いててん、チョークで。気付たら夕方なってて、さっきまでと空の色が変わってた。ちょっとこわい空やった。高いような、低いような、オレンジみたいな、ピンクみたいな、やさしい、さみしい、そんなんやって、ほんまに綺麗かってん。そういう時やったから特別に見えたんかもしれへんけど。ほんまに綺麗かったんよ。今までずっとな、あん時みた空の話がしたかってん。誰に言っても、伝わらへん気して、伝わらへんかったらって思って、言われへんかったんやけどな。ほんまにきれいやったんやで。私も、私もずっと曽田さんのこと考えてた。同じやね」

練「杉原さん。好きです」